学校連携によるアートワークショップを通した地域づくり
-ニュータウンにおける地域アイデンティティの確立を目指して-

曽和 具之 (神戸芸術工科大学講師)
     
 図1 ワークショップにおける作品の制作

1.地域性を活かしたまちづくり

 2004年、国際都市としての歴史を持ち、かつ近隣には山林や田畑が残り、古い歴史を持つ学園都市において、小学校・中学校・高等学校・大学および地域が連携したアートワークショップ「学園都市学校連携アートワークショッププロジェクト」を実施することになった。この地域活動の中心を担ったのは、神戸芸術工科大学、および兵庫県立伊川谷北高等学校 (以下、伊川谷北高校)、そして、近隣の小学校に通っている児童の保護者などである。
 2006年までに計3回実施してきた。参加者は毎年、約100名。スタッフ約50名によるアートイベントである。
 実施したアートワークショップの基本理念は、「子どもと高校生、大学生、そして地域の人々が協同して1日で作品を仕上げる」ことにある。すなわち、有名なアーティストを招いて子どもたちにアートの教育をするのではなく、また、家庭や学校に持ち帰り何日もかけて仕上げるものでもない。朝、会場に集まり、テーマを聞き、それぞれの役割をその場で決めて、作業にかかる。そして、夕方には展示をするという、即戦力と協調性を必要とする作業である。
 第1回のアートワークショップでは、新聞紙と医療用石膏マットで基本的な造形を施し、水彩絵の具、蛍光塗料および畜光塗料を用いて彩色を行った造形物を制作した。参加した小学生は2年生から6年生までの約90名。小学生が造形をしやすいように、卵の形態をモチーフに制作を展開した。図1はワークショップ当日の様子である。
 造形物はその日のうちに会場内に展示した。近隣の農家から提供してもらった稲わら・茅などを鳥の巣に見立てて、子どもとスタッフ全員で展示作業を行った。また、夜間は紫外線ライトを照射し、蛍光塗料および畜光塗料の効果を発揮できるようにした(図2)。

 
  図2 ブラックライトにより発光する制作物

2.子どもの感性のおもむくままに
 
 このワークショップでは最終成果物に対して優劣をつけたり、あるいは模範成果物を展示したりすることはなかった。そのため、子どもたちが制作プロセスで、いかに楽しみ、集中し、かつ感性を解き放って制作活動に没頭できたかを客観的に観察する必要があった。そこで私たちは、ワークショップ中の記録を動画と静止画で綿密に記録し、会場内で子どもたちに開示していった。このことにより子どもたちは、数分前に自分たちがしていた行動を客観的に観察することができるようになり、自分たちの制作に対する姿勢やスタッフなどとのコミュニケーションについてリフレクションをすることが可能になった。
 また、記録されたデータは即日webサイトに掲載され、参加者が帰宅後に1日を振り返ることができるよう考慮した(図3)。これにより、ワークショップを1日限りのイベントとするのではなく、次回の参加を喚起させたり、あるいは、次の参加の時にはさらに制作意欲が向上した状態で望めるように配慮した。

   
 図3 ワークショップのwebサイト(http://product.kobe-du.ac.jp/workshop/

3.地域に根ざした学校教育を目指して
 
 今回のワークショップの特徴の一つとして以下の点が上げられる。
1)地域の小学校・中学校。高等学校・大学および地域住民が一体となってイベントの準備、進行を担った。
2)ニュータウンの住民と周辺集落の住民とのかかわりを持たせるため、素材の一部に周辺地域の野山から採集した稲わらや茅を用いた。
3)子どもたちに制作活動を通じて、地域の歴史や環境を学び取ってもらうために、制作だけでなく、展示準備や後かたづけも協同で行った。
 特に、(2)については、周辺集落の協力があってこそ成り立った活動であった。日常生活の中で、ほとんど分離してした環境におかれているニュータウンと周辺集落の住民にとって、このような活動を通して、情報を交換できたことはこれまで数少なかったように思われる。単に目新しい制作活動を繰り広げるのではなく、地域に内在する人的・物質的・地理的環境を考慮しながら、地域に根付いた活動を続けていくことが、これからの地域活動にとって重要であると考えている。