中国(桂林)・台湾(高雄)彫刻シンポジウム
354−アジアにおける環境芸術の今後−
 
  会員 高須賀昌志(美術家/埼玉大学助教授)
 
   昨年、11月と12月に立て続けに彫刻シンポジウムを訪ねる機会を得た。ひとつは中華人民共和国、広西壮族自治区、桂林にあるyuzi-paradiseにおいて開催された彫刻シンポジウム。ふたつ目は本学会会員のサトルタカダ氏も参加されていた台湾で開催された高雄國際鋼雕藝術節である。いずれのシンポジウムも今後のアジアにおける環境芸術、翻って日本の環境芸術を考える上で示唆にとんだ体験であった。

 広西壮族自治区は中国内陸の最南部に位置し、ベトナムと隣する。 面積は23万ku、人口は4588万人。壮族・漢族・ヨウ族・苗族・トン族などの民族がある。 盆地状で、丘陵、河川が多量に分布。千差万別の山の峰・岩の洞穴を造成され、奇岩・奇峰の景色を楽しむ川下りで有名。あの中国の伝統的な山水画に見られる環境である。日本人が忘れている手つかずの自然が残されている場所だ。 yuzi-paradiseは広大敷地を持つ彫刻公園である。(石灰岩の山を23個所有しているとのこと)250点以上の作品はまだまだ増える予定だそうだ。シンンポジウムは今回で12回目を数える。世界中から毎回10人以上の作家が招かれ、一ヶ月半の滞在期間で制作がおこなわれる。作家たちが彫刻の他に版画や陶芸の制作をするアトリエやホテル・食堂などが入る現代的な建物群は、その自然の中にあって唐突といってもよいほどの違和感をもつ。田舎の景色の上に、上海に見られるような超未来的な風景とが何のつながりもなく重ねられている。時間の超越感に驚かされる。つくられる作品もまた、その物理的大きさを格安な賃金(日本的尺度でいえば)で雇われる人間の数で凌駕し実現せしめる力強さは、まさに中国であり大陸的である。(写真左列)

 高雄市は台湾の西南端に位置し、人口150万人。世界第3のコンテナ港を持つ鉄鋼業が盛んな鉄の街として知られる。シンポジウムは高雄市政府文化局が主催し、日本、アメリカ(2名)、ラトビア、中国の作家と台湾5名を加えた全10名の作家が鉄を素材とした“戸外”鋼雕を公開制作するものだ。ゲスト出品者として本学会伊藤隆道会長が参加された。公開制作の時間が午後2時からであった。その理由は日中の暑さによるところもあるようだが、日暮れ後の夜9時30分まで公開し、闇夜の中にスポットライトを浴びながらグラインダーの火花を散らす作家の姿は、さながら波止場の倉庫群のなかにあって光のパフォーマンスを演じているようであった。作家の制作リズムなどおかまいなしのスケジュールであるが、訪れる観客にとっては興味深い場面として映っていたようである。一事が万事この調子で、ゲート正面にある舞台ではオープニングセレモニーが華々しく催され、市民による演奏や舞踊などの連夜にわたるお披露目。周辺の倉庫では地元作家の展覧会や画廊が主催する見本市が賑々しく催されていた。毎夜、高雄の人々が数多く集う様子は日本でいうところの「お祭り」や「縁日」と重なる。(写真右列)

 二つの場で見られた作品は、その造形の質を問えば(その立場にない者がいうのもなんであるが)まだまだ日本のほうが何年か先に進んでいるのかもしれない。しかし、それを支える周辺の環境、もっといえば、醸成しようとする社会的精神は、今の日本を遥かに越えているように感じた。日本は近い未来に文化的後進国となっているのかもしれない。