現在“銀座”で作品をつくっています。 フロッタージュを利用して、まちの一部を写しとる制作を行なっているわたしは、9月からの個展に向けて、銀座と聞いて思い浮かぶような名店から海外高級ブランド店や庶民的な飲食店までのおよそ120の店舗や企業に協力を呼びかけ、その場所“らしさ”のある部分を写しとっています。これにより銀座というまちの“アート”に対する許容や“わたし”に対する受け入れや店の“銀座”に対する想いがフロッタージュのごとく浮かびあがってくるのではないかと期待しています。しかしそれは相手の反応に左右され、自分でも予測のできないまさに体当たりの制作になっています。はたしてどれだけの協力を得ることができ、またどんなものが写しとれるのでしょうか、今の銀座がいくらかでも見えてくるでしょうか。 この何ヶ月間毎日のように銀座を歩いていてもその変化に気がつかないほどまちの移り変わりにハッとさせられます。工事があまりに日常化してしまったことのせいで、まちに対してあまりに無関心になってしまったのか、どれも同じようなまちに見えてどこかの風景と錯覚しまったのか、工事をする側が私たちに気づかせないほどの技術の進歩をとげたのか、驚きと同時に不安にさえなってきます。気がつかないあいだに大事なものが失っていないだろうかと。時代の流れ、持ち主の都合といえば仕方のないことなのですが、なんともはがゆくてしょうがありません。 現代は高度情報化社会であり大量消費社会であることを改めて東京で実感しています。まちが情報のように絶えず更新され、それが時代なのだ、それが東京なのだとあたかも当然のような感じですが、わたしには不思議でなりません。 古くなったもの、汚いもの、不便なものというものは今の都会のなかで浮いて見えることがあります。しかし使い込めば使い込むほど味わいが増してくるものの良さは誰もが知っているはずです。そこには単に見えているようなこととは逆の価値をそこに見ているのです。木のツヤや丸みを帯びてくるかたち、塗料の剥げかかった色味やかたち、金属の錆のムラ、同じようで一つ一つ違うタイルや煉瓦の色あい、しかしそれだけではない多様な人のいとなみの痕跡をわたしはむしろ美しいとさえ思えます。そこには使った人や場所の記憶や歴史という目には見えないものが表面に現われてくるからなのだと思います。目に見えるものと目には見えないもの。最近見えていない人が多くなっているような気がしてなりません。
酒百宏一個展「銀座フロッタージュ計画」 9月3日(月)〜9月27日(水) 日・祝休 INAXギャラリー2(東京・京橋)
タイトル 「akka」 (いつも作品の下に花が飾られています。そこの生活の結びついた空間が出来上がっています。) 2001.設置/ 「ステージファースト用賀」 東京・世田谷区[主催/ 株式会社アーバネットコーポレーション]
<FRPハニカムコアパネル>新しい素材との出会いと開発、デザインの可能性について― 昨年ハニカムコアハウスという住宅を設計した。この住宅設計の与条件の一つに、同居する猫の明るい居場所の確保と猫の爪のたたない床の素材を使用するという事があった。光を透過し且つ平滑面で猫にも優しい素材であることが求められた。既成の素材に合致するものがなく、新しい素材捜しを初期の基本設計時から開始した。MDF等と同様に下地材としてのハニカムコア材は、コア材故に表面には現れない見えない材料であが、その断面形状の面白さ、多様な表情を持つこの素材を内部構造が見える仕上げ材にならないものかという考えが潜在的にあった。 ハニカム材は、外壁パネルや飛行機、新幹線のボディーなどに多く使用されるため大手建材メーカーに属すか非鉄金属メーカーで製作することが多く、このような工場の二次生産品でしかも半製品化状態のものは設計者の意図が及ぶものはないと諦めていた。しかし、新日本コア(王子製紙の関連会社)と出会い生産工程のなかで小ロットでも人の手が介入する余地があることが判明しこの素材の開発が可能になった。 ○素材の検証と素材特性 コア形状は光の透過率の高いロール状(円柱状)であったが既製パネルはこれにアルミ版やプラスチック樹脂をサンドイッチして完成品となっている。今回はこの面材(仕上面)にポリエステル樹脂と共にガラス繊維を流し込み、透光性を重視した仕上げを目指した。この素材特性として第1に軽量であり、極めて大きな耐荷重を許容することができる点があげられる。(サイズは 2.9M×10Mから切り出せるフリ?サイズで厚みも15.5o×70 oまでの選択が可能) 又FRPはガラスの約半分という低い収縮率を持ち更に断熱性能にも優れるため陽除けの役目も兼ねて使用した。 小住宅にも関わらず新素材の透光性FRPハニカムコアパネルが実現したのは建て主の英断と製造メーカー新日本コアよるところが大であった。この住宅では床、家具、建具、照明などロールの形状に合せてスケールの異なる部位に使用したが、その後舞台やTVのセットの床にも試験的に敷き面白い効果があった。又、独自のパネル式家具も試作した。この素材をしばらく追求したい思いであるが、会員の皆様にも是非この新しい素材の可能性を試して頂きたいと思います。 FRPハニカムコアパネル 連絡先/(株)新日本コア 担当:山田氏 TEL 048-793-2771
テキスタイル雑感 テキスタイルアート、タペストリー、ファイバーワーク、ソフトスカルプチュア、ソフトファンクショナルワーク・・・。私が35年間近くかかわってきた分野は、このような、まだその内容をよくは知られていないカタカナ文字で呼ばれることが多い。織り造形、繊維造形ともいわれているので、少しは内容を理解していただけるだろうか。とても広い意味で布づくりといえよう。 1962年タペストリー復興運動の一環としてスイス・ローザンヌで開催された国際タペストリービエンナーレを皮切りに、70年代にはポーランド・ウッジで国際タペストリートリエンナーレが、80年代には京都で国際テキスタイルコンペティションが開催されるようになり100カ国を越える国から繊維による造形作品が寄せられ、参加した作家達の軽々と国境を越えた交流がはじまり、おもしろい布が次々に誕生していった。自国に古くから伝わる布づくりの伝統を繙き、現代の素材と感性で作り上げた作品の展示は壮観であった。多くの国で作家達は教育機関で後進の指導にあたり、現在のおもしろい布づくりへと展開していった。 国際展華やかなりし頃日本は空前のバブル期で、建築ブームと相俟って繊維の造形作品が建築空間に参加するようになった。糸や布に対する認識が少しは変えられたのではないだろうか。 その後の不況のなか、企画展も建築空間への参加も減少してはいるが。 3年前からバルト3国のひとつラトヴィアでタペストリートリエンナーレが開催されるようになった。タペストリー復興運動というより国興しといったところか。今後の展開が期待される。 人類は30万年程も前から糸や繊維に手を加え様々なものをつくってきた。布作りにおける編む、織る、組む、搦める、縫うといった技術は人類における最古のテクノロジーといって過言ではない。布は人類の衣食住全ての分野で、なくてはならない存在である。環境を形成する重要な要素といえる。しかし余りにも量が多くその有り難みが認識されていない。宇宙に行くにも、消防においても、生命を維持する人工血管でも布なくしては考えられない。またパリやミラノでのコレクションにおいてもテキスタイルの重要性を前面に出すデザイナーが増えていると私は感じている。やっとテキスタイルの時代がきたのだと私は早合点している。 今、面白い布が町に溢れている。テキスタイルの世界では毎日が革命なのだ。テキスタイルはおもしろい。人類は素晴らしい。